宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』が気になる。
読んだ人の感想や書評を見て、読むかどうか判断したい。
この記事は上記の要望に応えます!
今回は『成瀬は天下を取りにいく』の紹介記事です。
本作は僕も前まえから気になっていて、ついに今回読んでしまったクチです。
タイトルのインパクト、表紙に描かれている西武のユニフォームを着た女の子、そして最初の秀逸な一文
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
「え、どういうこと?」と気になり、そのまま心を持っていかれ読了してしまいました。
そこで僕が感じた本作の魅力を、概要とともにあまさず紹介したいと思います。
- 主な登場人物
- 各話のあらすじ
- ここが面白い!
- 舞台の地図
- こんな人におすすめ
本作をより楽しめる内容になっていますので、よかったら最後までチェックしてみてください。
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】主な登場人物
成瀬あかり
滋賀県大津市在住。幼稚園のころから何をやらせても頭一つ抜けており、学業成績も優秀。
興味を持ったことは納得するまで追求するタイプで、突拍子もないことを突然はじめる。
そのため学校ではいつも浮いており、変人扱いされている。
「〜なのか」「〜だな」などとおじさん口調で話す。
幼馴染で同じマンションに住んでいる島崎とは親友。
島崎みゆき
成瀬の幼馴染じみで親友。
成瀬の1番の理解者だけに、彼女の突拍子もないチャレンジに巻きこまれることも多い。
内心、成瀬の大物感に期待していて、成瀬あかり史の見届け人になりたいと考えている。
自身を凡人と評しているが、コミュニケーション能力が高く、友人も多い。
稲枝敬太
滋賀県大津市在住。大阪のweb会社でホームページ制作の仕事をしている40過ぎのサラリーマン。
小学校時代からの友人マサルは弁護士で、地元に事務所をかまえている。
ツイッター(現X)では”タクロー”という名前のネト垢を持っており、たわいもないことを気まぐれにつぶやく。
西武大津店閉店をきっかけに小学校の同窓会を開くことになり、マサルとともに幹事を引き受ける。
大貫かえで
滋賀県大津市在住。
小学校の頃から地味な存在で、クラス内の上中下の下位グループに属していたが、高校進学を機に一念発起。高校デビューを狙う。
成瀬とは小1と小5と同じクラスで、高1で再び同じになるが、変人の成瀬とは極力関わりたくないと考えている。
くせ毛の髪がコンプレックス。
西浦航一郎
広島在住の高校生。中学時代に身長186cm、体重100kgになる。
恵まれた体格ゆえに小、中と柔道教室に通わされていたが、たいした結果を残せなかった。
高校では柔道に見切りをつけ、お調子者の友人結希人とともに、かるた部に入部した。
体格に似合わず恋愛では奥手。あだ名はにっしゃん。
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】本の内容(各話のあらすじ)
本作は全6話で、タイトルは以下のとおり。
-
- ありがとう西武大津店
- 膳所(ぜぜ)から来ました
- 階段は走らない
- 線がつながる
- レッツゴーミシガン
- ときめき江州音頭
1話ずつあらすじをご紹介します。
ありがとう西武大津店
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」
滋賀県大津市に住む成瀬(中2女子)は、8月末で閉店する西武大津店前から生中継している地元の情報番組に、毎日映り込むことを決意する。
友人の島崎(中2女子)は成瀬から、自分がちゃんと映っているか毎日番組をチェックしてほしいと頼まれ、困惑しつつも引き受ける。
島崎はまた変なことに巻き込まれてしまったと思う反面、成瀬から漂う大物感に期待もしているのだった。
膳所(ぜぜ)から来ました
M-1グランプリに出ると言い出した成瀬(中2)。
嫌な予感がした友人の島崎は、誰と出るのかたずねると成瀬は「島崎しかいないだろ」と即答する。
しぶしぶOKした島崎だったが…。
階段は走らない
西武大津店の閉店を期に小学校の同窓会を開くことになった敬太とマサル(42歳)。
マサルは小6の冬、突然転校してしまったタクローに会いたいと敬太に相談する。
線がつながる
高校デビューを企む大貫(高1女子)。入学式初日、美容院で縮毛矯正した髪をひっさげ気合を入れて登校。
教室内で充実した高校生活を妄想していた矢先、坊主頭にした成瀬が教室に入ってきたのだった。
レッツゴーミシガン
滋賀開催の百人一首全国大会に、広島代表として出場した西浦ことにっしゃん(高2男子)。
そこで異彩を放つかるた少女、成瀬に一目惚れしてしまう。
ときめき江州音頭
高3になった成瀬。受験勉強や人生の目標である200歳まで生きるための日課を順調に続けていた。
そんなある日、島崎から大学進学を機に家族で東京に引っ越すことを知らされる。冷静でいるつもりの成瀬だったが…。
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】ここが面白い!
僕が思う本書の面白ポイントは以下4つ。
-
- 成瀬が人として面白すぎる
- 成瀬、実はかわいい!?
- 登場人物へのわかりみが強い!
- 地元へのノスタルジーを感じられる
1つずつご紹介します。
成瀬が人として面白すぎる
成瀬は自分の好奇心にどこまでも素直で、関心ごとにはアクセル全開で突進していくタイプ。
「これをしたら人からどう思われるか」なんていっさい気にしません。
例えば
- 閉店予定の西武大津店前から生中継している地元のテレビ番組に毎日映り込む(無表情でテレビカメラを見つめるだけ)
- 髪の毛が伸びるペースを知るために、高校入学初日に坊主で登校する
- 本気で200歳まで生きることを目標にし、日々の体調管理を怠らない
などなど、気づいたら突拍子もないこと情熱を注いでいるので目が離せません!
とにかく成瀬は面白すぎです!ひとりの人間として嫉妬してしまいます。
成瀬、実はかわいい!?
面白すぎて目が離せない成瀬ですが、5話目の『レッツゴーミシガン』では成瀬がかわいく見えて、あやうく恋しそうになりましたw
百人一首の全国大会に出場するため、広島から滋賀まで遠征に来た西浦ことにっしゃんが、成瀬にひとめぼれしてしまい、成瀬の意外な一面を引き出してしまうからです。
特に以下の様子には、ドキッとしてしまいました。
- デートに水色ワンピースと麦わら帽子でくる(普段とのギャップ!)
- 好きと言われて照れる(普段の堂々した様子とのギャップ!)
- 恋愛にも真正面から向き合う
うっかり成瀬にガチ恋しないよう、これから読む人は要注意です!
登場人物へのわかりみが強い!
本書では成瀬以外の人物も各話の語り手として登場します。
彼ら彼女らは学校生活の中で起こる様々な悩みを語るのですが、「わかる、自分もそういうことあったわ」と共感することばかりでした。
例えば
- 成瀬のことは好きだが変人なので、肩入れしすぎて自分も浮いてしまうことを気にする島崎
- 充実した高校生活を送りたいので、クラス内での自分のポジションを必死に探る大貫
- 小学校時代にけんか別れした友達のことを、大人になった今も気にしている敬太とマサル
など、一般人たちへの共感要素が満載なのも本書の魅力です。
地元へのノスタルジーを感じられる
本作では「※ミシガンクルーズ」という、おそらく滋賀県の方が誇る観光船がでてきます。
しかしミシガンクルーズ以外は、ほとんど成瀬が住む大津市の日常的な場所が舞台です。
その日常的な場所での出来事は「自分が育った街でもこういうことあったなあ」とノスタルジーな気持ちを思い起こさせてくれました。
例えば本作には、以下のような場面があります。
- 西武大津店(地元百貨店)の閉店
→ 普段は行かないけど、いざ閉店となると名残惜しく寂しくなる - 地元のテレビ局が夕方に放送している情報番組
→ 出演すると後日「この前テレビ出てたね!」と友達や知人に言われる - 大きな商業施設跡地に分譲マンションが建つ
→ 得も言われぬ気分になる - 地元の美容室
→ 気さくなおっちゃん、おばちゃんが営んでいる など
ノスタルジックな気持ちになりつつ、かつての自分と同じような体験をする作中の登場人物たちに、より感情移入できました。
宮島先生の地元愛を感じます。
こういうノスタルジックな描写は、地元愛が根底にないと書けないと思います。
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】舞台周辺の地図
読む前に、物語の舞台となる滋賀県大津市膳所(ぜぜ)周辺の地図をチェックしておくと、情景をイメージしやすいと感じました。
以下にポップな地図と主な場所の画像を共有していますので、良かったら読む前にチェックしてみてください。
本作の作者、宮下三奈さんがX(旧Twitter)で共有されている膳所周辺の地図『ぜぜさんぽ(米村知倫さん作)』▼
西武大津店(2020年8月閉店)。『ありがとう西武大津店』で登場▼
馬場児童公園。成瀬と島崎が漫才の練習場所にしている▼
ときめき坂。膳所駅から琵琶湖方面へ続く街道▼
大津市立平野小学校。本作中にたびたび登場する、大津市立ときめき小学校のモデル校。▼
膳所駅。登場人物たちがよく使う▼
観光船ミシガンクルーズ乗り場。『レッツゴーミシガン』で登場。成瀬と西浦(にっしゃん)がデートで使う。▼
滋賀県立膳所高等学校。『線がつながる』で登場。成瀬と大貫が通う。▼
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】こんな人におすすめ
- ふだん小説を読まない人(明快でわかりやすいストーリーのため)
- 最近あんまり笑ってないなあと感じている人
- 気持ちよく愉快に笑える小説が読みたい人
- 気持ちのいい青春小説を求めている人
- シリアスな重い小説を読んだので、次は軽いものを読みたいと考えている人
- 滋賀県出身者(地元愛にあふれている小説のため)
表紙の女の子がライオンズのユニフォームを着ているので「野球小説に違いない。面白そう」と勘違いしている人
【成瀬は天下を取りにいく_感想・書評】まとめ
琵琶湖遊覧船ミシガン。本作5話目『レッツゴーミシガン』で登場する。▼
今回は宮島未奈さんの『成瀬は天下を取りにいく』を紹介しました。
気になる方はぜひ読んでみてください。
ではまた!
今回の記事に関連した、おすすめ記事をピックアップしてみました。
楽しい記事になっていますので、よかったら見ていってください。
\おすすめ記事/
X(旧Twitter)でも様々な作品の感想や紹介をつぶやいていますので、よかったらのぞいてみてください。