『父が娘に語る経済の話』という経済の教養本が気になる。
テレビ番組でも取り上げられたみたいだけど、面白いのかな?
経済の成り立ちや仕組みに興味がある。
知識のない入門者向けに分かりやすく書かれた良書ってないかな?
この記事は上記のような要望に応えます!
人が生きていく上で切っても切りはなせないお金ですが、そもそもどういう仕組みで世の中に出回っているのか、どんな経緯で今の仕組みになったのかって、やっぱり疑問を持ってしまいますよね。
「でも経済って難しそうだし、経済関連のニュースを見ても今いちよくわからん」
安心してください、本書はそんな方にもってこいの入門書になっています。
僕も経済って小難しいなと感じていましたが、本書は語り口調で、わかりやすい具体例を交えながら経済の成り立ちや仕組みを説明してくれるので、楽しく経済を学べます。
- 序盤の内容を紙しばい式で紹介
- 本書を楽しむ上での留意点
- 本書をおすすめできる人
- 読んだ人の感想
よかったら最後までお読みいただき、本書の魅力を体感いただけると幸いです。
【父が娘に語る経済の話・感想】本の概要
概要
十代の娘の「なぜ、世の中にはこんなに格差があるの?」というシンプルな質問をきっかけに、元ギリシャ財務大臣の父が経済の仕組みを語る。
「宗教」や「文学」「SF映画」など多彩な切り口で、1万年以上の歴史を一気に見通し、「農業の発明」や「産業革命」から「仮想通貨」「AI革命」までその本質を鮮やかに説く。
引用元:ダイヤモンド社
著者:ヤニス・バルファキス氏(Yanis Varoufakis)
1961年アテネ生まれ。2015年、ギリシャの経済危機時に財務大臣を務め、EUから財政緊縮策を迫られるなか大幅な債務帳消しを主張し、世界的な話題となった。
長年イギリス、オーストラリア、アメリカで経済学を教え、現在はアテネ大学で経済学教授を務めている。
著書には本書の他に、EU経済の問題を指摘した『そして弱者は困窮する』(未邦訳)や「史上最良の政治的回想録の1つ」(ガーディアン紙)と評された『アダルツ・イン・ザ・ルーム』(未邦訳)など、数々の世界的ベストセラーを持つ。
2016年にはDiEM25(民主的ヨーロッパ運動2025)を共同で設立し、その理念を世界中に訴えている。
引用元:ダイヤモンド社
【父が娘に語る経済の話・感想】内容紹介
どんな内容か知りたい。
そうですよね。そこで序盤の内容をかいつまみ、わかりやすく紙しばい式でまとめてみました。
内容は以下の通り。
-
- 第1部:貨幣経済と格差のはじまり
- 第2部:市場社会の成立
1部ずつご紹介します。
第1部:貨幣経済と格差のはじまり
(1)約1万2千年前、農耕社会が誕生する
昔むかし、今から約1万2千年ぐらい前、人類は農業を発明しました。
農業を発明したのは、人口の増加にともない狩猟や採集だけでは十分な食料を確保できなくなり、飢餓に苦しむ人が増えていたからです。
農業を発明したことで、それまでに比べて安定して食料を確保できるようになっていました。
(2)余剰作物を共有倉庫で保管するようになる
農業には大きなメリットがありました。自分たちが食べる以上の作物を収穫できた時、それを保管できたことです。
狩猟や採集でとれる肉や魚、くだものはすぐに腐ってしまいますが、農業で生み出す穀物(麦や米やとうもろこし)はもの持ちがよく、腐りにくい特性を持っていました。
余剰作物は、共有倉庫でまとめて保管されていました。大きな共有倉庫を作って少数の見張役に見張ってもらう方が、おのおので保管するよりずっと楽だったからです。
(3)預けた作物を証明する”貝がら”が流通するようになる
余剰作物を共有倉庫で保管するようになると、誰がどれだけ預けたかを記録しておく必要がでてきました。
そこで作物保管するときは、貝がらに誰が何をどれだけ預けたかを記し、交換券として本人に渡すことにしました。(この時、文字が生まれたと言われています)
そのうち貝がらは他の食べ物(野菜や魚や肉など)と交換したり、労働に対する報酬としても使われるようになっていきました。
(4)通貨として流通しはじめた貝がらの信用力が課題に
文字が記された貝がらを倉庫に持っていけば、穀物と交換してもらえる。はずですが、それを約束するものは何もありません。
貝がらが信用できるものであるとする、何かが必要になりました。
(5)王族など権威者が通貨としての貝がらを保証するようになる
貝がらに信用力がないことに目をつけた王族などの権威者たちは、自分たちが貝がらを保証すると名乗りでました。
王族など権威者が保証してくれるなら大丈夫だと、人々は安心して貝がらを使うようになりました。
(6)権威者は余剰作物を利用して豊かになり、一般人との格差が広がりはじめる
貝がらを保証するようになった権威者は、余剰作物から高額報酬を出すかたちで、外敵から作物を守るための軍隊や警察、作物を管理するための官僚を雇いました。(国家誕生のきっかけ)
権威者自身も余剰作物を守るという立場から、けた違いの作物を取り分として持っていきました。
一方、一般農民が自ら収穫したり、労働によって得た作物は、権威者に比べるとほんのわずかなものです。
こうして権威者と一般農民との間で格差が広がりはじめました。
※ちなみに権威者は、一般農民が格差に不満を持ち暴動が起こすことを恐れ、宗教を利用して「権威者だけが国や地域を統治できる権利を持っている」と一般農民に信じ込ませていました。
第2部:市場社会の成立
(1)中世封建時代のイギリスでは、領主のもとで農奴(小作人や奴隷)が使役されていた
封建領主時代(8~15世紀ごろ)、領主たちは先祖代々受けついだ土地で農奴(小作人や奴隷)を働かせ、収穫の大部分を独り占めして豊かな生活を送っていました。
一方、農奴たちは毎日汗水たらして働きましたが、領主からもらえる報酬は少なく、暮らしは貧しいままでした。
農奴の中には、土地を耕し作物を育てるために必要な道具(くわやスコップ、リアカーなど)を作る専門の職人などもおり、おたがいに協力しながら生活していました。
(2)航海技術の発達にともない、海外貿易で大もうけする商人が現れはじめる
封建時代後期、航海技術が発達したことで、商人たちは船を使ってさかんに海外貿易を行うようになりました。
特にイギリスでとれた羊毛を中国で絹に交換し、絹を日本で刀に交換し、刀をインドで香辛料に交換し、イギリスに帰って香辛料を売るとかなり高額で売れるため、さかんに取引が行われました。
羊毛を仕入れて海外に売りにいった商人は大もうけし、お金持ちの商人がどんどん増えていきました。
領主たちは貿易でお金持ちになった商人たちをうとましく思っていました。彼らによって自分たちの地位や資産が小さくみえてしまうことを恐れていたからです。
(3)領主たちも貿易で儲けようと、農奴を追い出して羊牧場をはじめる
そこで領主たちは、自分たちの地位や資産のすごさを維持するために、自分たちも羊毛を生産してお金もうけをすることにしました。
領主たちは領地内で羊牧場を行うために、そこで働いていた農奴を追い出すことにしました。
(4)仕事を求める農奴が国じゅうにあふれた
領主たちの多くが領地内で羊牧場をはじめたため、領主に追い出されて仕事を求める農奴たちが国中にあふれかえりました。
記録によると、農奴の7割以上が仕事を失ったといわれています。
この領主が農奴たちを土地からしめ出した出来事は「囲い込み」とよばれるようになりました。
(5)一部の農奴が羊牧場の経営者として雇われるようになる
しばらく羊牧場をやっていた領主たちですが、自分たちで牧場経営を行うのがおっくうになってきました。
そこで、追い出した農奴の中で優秀な人間に土地を貸して代わりに牧場を経営してもらい、羊毛の売り上げに応じて土地の賃料を請求することを思いつきました。
領主が一部の農奴に話を持ちかけると、生きるために必死に仕事を探していた農奴たちはすぐに乗ってきました。
(6)雇われ経営者の農奴は他の農奴を雇い入れ、牧場を経営するようになる
雇われた農奴は、ほかの農奴たちを従業員として雇い、必要な物資を仕入れて牧場を経営するようになりました。
このようなことが国中に広がり、ほとんどの人が市場(商品や労働力を売買いする)に参加せざるを得ない『市場社会』が誕生しました。
(7)産業革命により、雇用者と被雇用者の格差はものすごいスピードで拡大していった
市場社会の誕生から数百年後、イギリスで産業革命(※)が起きました。
お金持ちは工場をつくり、従業員や経営者を雇い、物資をどんどん生産、出荷して利益を得るようになりました。
一方、従業員など雇われている人は毎日朝から夜まで必死に働いても少ししかお金を稼げません。
こうしてお金持ちはお金を使ってよりお金持ちになり、それ以外の人は働けど暮らしはよくならず、経済格差はすごいスピードでひらいていきました。(つづく)
※産業革命:機械や蒸気機関の発明により、物資の生産性が飛躍的に向上したこと
【父が娘に語る経済の話・感想】本書を楽しむ上での留意点
第6章『恐るべき「機械」の呪い』で、筆者の主張に対する証拠(データや引用)・論拠が乏しく、「なぜそう言えるの?」と腑に落ちない箇所があります。
以下が該当箇所です。
いまのひとたちの多くは、昔より程度の低い仕事についていて、以前よりはるかに不安定な状況に置かれている。
引用元:ダイヤモンド社『父が娘に語る経済の話。』144P
”程度の低い仕事”がどんな仕事を指すかは不明ですが、現代ではかつて人間がせざるを得なかった単純作業の多くをロボットやコンピュータが担っています。
昔に比べ、人々の多くが程度の低い仕事についていることがわかるデータを示してほしかったところです。
(前略)工場で働くロボットは製造には役立っても、製品を買ってはくれない。すると「需要」が下がる。
引用元:ダイヤモンド社『父が娘に語る経済の話。』149P
工場がロボット化したからといって、なぜ需要が下がってしまうのか。一見関係ないように見えます。
例えば、自動車工場はロボット化がかなり進んでいますが、昔に比べて自動車の需要は落ちたなどという話は聞きません。
もう少し具体的に説明してほしかった箇所です。
もし社会の仕組みがこれまでと変わらず、機械が生み出す利益をひと握りの人たちが独占し続けるとすれば、新しい仕事は生まれないと思う。
ダイヤモンド社『父が娘に語る経済の話。』156P
人が願望や欲望を持っている限り、それらを満たす新しい商品やサービスおよび新しい仕事は生まれ続けるのではないでしょうか。
もし著者に質問できる機会があれば、聞いてみたいところです。
ほかにも腑に落ちないところがあるかもしれませんが、僕は「なぜ著者はそう主張するのか」と考える余地ととらえ、楽しみながら考察することにしています。
【父が娘に語る経済の話・感想】こんな人におすすめ
【おすすめできる人】
本書は初心者向けに、分かりやすい例えなども交えながら楽しく経済世界を案内してくれるため、経済の入門書としておすすめできます。
経済のカラクリを知ることも出来るため、知的好奇心を満たしてくれる1冊でもあります。
【おすすめできない人】
本書でお金の稼ぎ方を学ぶことはできません。
【父が娘に語る経済の話・感想】ほかの人の感想
【父が娘に語る経済の話・感想】まとめ
今回は『父が娘に語る経済の話。』をご紹介しました。
本書は奥深い経済世界を、ツアー列車で周遊する感覚で楽しめる一冊です。
よかったら気軽にツアー参加する気持ちで読んでみてください。
ではまた!
X(旧Twitter)でも様々な作品の感想や紹介をつぶやいていますので、よかったらのぞいてみてください。
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