
百田尚樹さんの『カエルの楽園』、今の日本の危険な状況とおそろしい未来に警鐘をならす内容で、興味深かった。
他の人の感想や考察も見て、さらに作品を堪能したい!
この記事は上記の要望にこたえます!
こんにちは。当ブログ『楽本カフェ』のマスターとおるです。
今回は百田尚樹さんの『カエルの楽園』を読んでみました。
本作は、日本が置かれている危険な状況を風刺している作品でしたね。
しかし、本作が教えてくれていることは日本の危険な状況の風刺だけではなかったんです。
実は、『考えること』をおろそかにすると破滅を招くということもひそかに教えてくれていました。
そこで今回は、本作から学べる『人生に欠かせない思考術』というテーマで感想・考察を書いてみました。
- 思考停止から脱却する名言3選
- 破滅をまねく愚言3選
- ナパージュの滅亡は自業自得
- ナパージュが滅びた本当の理由
友達とおしゃべりするような感覚で気軽に読んでいただき、楽しい時間を過ごしてもられば嬉しいです。
【『カエルの楽園 』感想・考察】こんな話でした


国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。
その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。
だが、南の沼に棲む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる……。
単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。
引用元:新潮社
【『カエルの楽園 』感想・考察】思考停止から脱却する名言3選


デイブレイクによって洗脳されていた多くのツチガエルたちは、三戒を盲信し、考えることを放棄していました。
しかし、国の未来を真剣に考えているまともなツチガエルたちも少数ですがいました。
彼らの発言は、日常生活の中でつい思考停止状態で物事を判断していることに気づかせてくれます。
そこで、中でも本質を突いている名言を3つ抜粋してみました。
名言1:それなら、自分の目を信じたらどうだ
それなら、自分の目を信じたらどうだ
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』67P
ナパージュのツチガエルたちは本質的に凶暴だと言われているが、そうは見えなかったというソクラテス。
そんなソクラテスに対するハンドレッドの返答です。
身近な人から聞いたうわさ話や、ネット上の転用情報、権威のある人の意見などは、つい鵜呑みしてしまいがちです。
しかし、自分が見聞きしていないことを鵜呑みするというのはリスクが高い行為でもあります。
ハンドレッドの発言は、一番信頼できるのは、自分自身の目で確かめた1次情報であるという当たり前のことに気づかせてくれます。
名言2:でも、そうしないと仲間が殺されるときには戦うよ
でも、そうしないと仲間が殺されるときには戦うよ
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』110P
三戒によって戦うことを禁じられているナパージュ。
ナパージュの危機に備え、日々体をきたえているワルグラも、通常時は三戒を守っています。
しかし、仲間の命が危機にさらされた時は、三戒を破ってでも戦うと発言しました。
多くのツチガエルたちは三戒に身をゆだね、「三戒さえ守っていれば大丈夫」と、自分たちの安全について考えることを放棄していました。
一方、ワルグラたちはナパージュの危機に備えて体をきたえ、自分たちに何ができるかを真剣に考えていました。
ナパージュのカエルたちの対照的な様子は、覚悟と責任を持たなければ思考は働かないことを物語っています。
名言3:ここが私たちの国であるという意味はどこにありますか?
(前略)南の沼のカエルが自由にナパージュに出入りしてもいいとなれば、ここが私たちの国であるという意味はどこにありますか?
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』132P
南の崖にあらわれたウシガエルに対して、どう対処するかを元老会議で話し合うツチガエルたち。
何もしないならウシガエルが南の崖の上に登って来てもいいと言う元老に対する、同じ元老のプロメテウスの発言です。
物事についてあれこれ考え、行動していると、物事の存在意義や目的を忘れそうになることがあります。
ウシガエルが南の崖に登って来てもいいと言った元老も、「国とは何か」「ナパージュのカエルが安心して暮らすためには」ということを忘れていました。
プロメテウスの言葉のように「○○とは何か」「何のためにやっているのか」と時々自分自身に問いかけ、本質や目的を見失わないようにしたいものです。
Next≫ 要注意!破滅したカエルたちの愚言
【『カエルの楽園 』感想・考察】つい言ってませんか?破滅をまねく愚言3選


本作中には名言を発したカエルも出てきましたが、それ以上に愚言を発するカエルがたくさんいました。
しかし、僕たちも日常生活の中で、つい同じような愚言を発してしている事があるのではないでしょうか。
ここでは特に注意すべき愚言を3つ抜粋してみました。
愚言1:デイブレイクがそう言っているから間違いないと思う
それは知らないけど、デイブレイクがそう言っているから間違いないと思う。
デイブレイクが嘘をつくはずないもの
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』100P
ソクラテスたちからハンニバル兄弟のことを聞かれ、「『カエル殺し』と言われている悪い奴ら」と答えたローラ。
理由を訊くと、デイブレイクが言っていたから間違いないと返答しました。
僕も日常を振り返ってみると、好きなタレントやユーチューバー、インフルエンサー、先生などの発言を「へーそうなんだ!」と無条件に信じ、事実だと思い込んでいることは少なくありません。
どんな人の発言でも「それは本当のことなのか」と疑問を持ち、証拠を確かめることが大切です。
愚言2:では、あと何回の会議で決定するかについての会議をしよう
では、あと何回の会議で決定するかについての会議をしよう
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』153P
南の崖の上に現れるウシガエルが日々増えていく状況を打開するため、開かれた元老会議。
スチームボートに守ってもらうというプロメテウスの案について、賛成派と反対派が対立し、議論が平行線をたどる中、最年長元老のガルディアンの発言です。
ガルディアンのようなことを言っていると、いつまでも結論は出ず、何もしないまま終わってしまうでしょう。
しかし僕も「じっくり考えて決めよう」「十分に準備してから行動しよう」と考え、行動を先のばしにしたことはたくさんあります。
チャンスは待ってくれません。
何かをやりたいと思ったらすぐに行動し、やりながら考えるぐらいのフットワークを持ちたいものです。
愚言3:それでウシガエルたちも南の崖から去って行くはずだ
ワルグラを処刑したことをすぐにウシガエルたちに知らせよう。
そうすることで、悪いのはあくまでワルグラ1匹であって、ナパージュのカエルには何の落ち度もないということがウシガエルたちにもわかってもらえるだろう。
それでウシガエルたちも南の崖から去って行くはずだ
引用元:新潮文庫『カエルの楽園』188P
ウシガエルの攻撃から身を守るために防戦したワルグラ。
元老議会が開かれ、ガルディアンら元老たちは防戦したことは三戒違反だと決定し、ワルグラを死刑にしました。
ワルグラを死刑にした後、ガルディアンは上記のように発言し安堵します。
しかし、ガルディアンの発言はなんの根拠もない希望的観測です。
自分たちの考えがウシガエルにわかってもらえなかった場合の対応についても考えられていません。
ワルグラを死刑にしたことを、ウシガエルに伝えたガルディアンたちがどうなったのかは、知ってのとおりです。
「うまくいく」と思うことは大切ですが、うまくいくように根拠のある仮説を立てて行動することや、最悪の状況を考えて準備をしておくことの重要性を改めて感じさせてくれる発言です。
Next≫ ひどい結末?いえ、自業自得です。
【『カエルの楽園 』感想・考察】ひどい結末だが自業自得


『三戒』を信じたナパージュのツチガエルたちは、最終的にウシガエルに支配され奴隷にされてしまうという、なんともひどい結末でした。
しかし、僕に言わせれば自業自得でしかありません。
自分たちの大切なものが奪われようとしているのに『三戒』にこだわり、信じればいつか救われるなどと考えて、何もしなかったから。
僕が10〜20代の頃に流行ったJ-POPにはよくこんな歌詞がありました。
「この想い届け!」「願いはいつか叶う」
僕もこんな歌を聞いて女の子にひそかに片想いをしたこともありました。
しかし「想い」は届かなかったし、「願い」は叶いませんでした。



想ったり、願ったりするだけで、相手に伝わるなら誰も苦労しないよ。
同じ国に住んでいる身近な人への恋心ですらなかなか届かないのだから、別の国の文化も考えも違う人に、国家の「願い」や「想い」が容易に届くわけがありません。
ツチガエルたちは自らの甘い考えに執着し、毅然とした態度を示さなかったから、ウシガエルたちに国を奪われた。
悪いですが当然の結果です。
Next≫ ナパージュが滅びた本当の理由とは?
【『カエルの楽園 』感想・考察】ナパージュが滅びた本当の理由


最後まで三戒の教えをかたくなに守り、ついに滅びてしまったナパージュ。
しかし、ナパージュが滅びた本当の理由は他にあると僕は考えています。
その理由について、以下の順で話してみたいと思います。
- ナパージュが滅びたのは「未知の問題解決力」の欠如
- グライダー人間と飛行機人間
- 飛行機人間を育てなければ未来はない
1つずつ説明します。
1.ナパージュが滅びたのは『未知の問題』の欠如
ナパージュが滅びた本当の理由、それは、『未知の問題』に対してほとんどのカエルが対応できなかったことです。
作中前半、三戒といういわば『指導者』に従っていればなんとかなった時は、カエルたちは冷静に判断し行動できていました。
しかし物語後半、ウシガエルが南の崖の上にどんどん登ってくるという、三戒では解決できない『未知の問題』が起こった時、ほとんどのカエルはパニックになり頭を抱えていました。



『未知の問題』に対応できていたのは、ハンニバル兄弟と元老のプロメテウスぐらいでした
『未知の問題』に対応できるツチガエルがもう少し多ければ、状況は変わっていたかもしれません。
では、なぜ多くのツチガエルたちは『未知の問題』に対応できなかったのか、次の見出しで説明します。
2.グライダー人間と飛行機人間
『思考の整理学』の著者である外山滋比古先生は、本著の中で以下のように語っています。
人間にはグライダー能力と飛行機能力とがある。
受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発見、発明するのが後者である。
(中略)学校はグライダー人間をつくるには適しているが、飛行機人間を育てる努力はほんのすこししかしていない。
学校教育が整備されてきたということは、ますますグライダー人間を増やす結果になった。
引用元:ちくま文庫『思考の整理学』13P
グライダーとしては一流である学生が、卒業間際になって論文を書くことになる。
これはこれまでの勉強といささか勝手が違う。
何でも自由に自分の好きなことを書いてみよ、というのが論文である。
グライダーは途方にくれる。突如としてこれまでとまるで違ったことを要求されても、できるわけがない。
グライダーとして優秀な学生ほどである。
引用元:ちくま文庫『思考の整理学』11~12P
指導者がいて、目標がはっきりしているところではグライダー能力は高く評価されるけども、新しい文化の創造には飛行機能力が不可欠である。
引用元:ちくま文庫『思考の整理学』15P
外山先生の考えをまとめると以下のようになります。


カエルの楽園に登場するナパージュは、日本をモデルにした国です。
ナパージュのカエルたちが、ウシガエルに侵攻されていく『未知の問題』を解決できなかったのは、日本同様にグライダー人間ばかりを量産する教育をしていたからだと推察できます。



ちなみに『思考の整理学』は、読むと”考えることが楽しくなる”とても面白い本なので、おすすめです。
3.飛行機人間を育てなければ未来はない
僕たちが住む日本も早急に『飛行機人間』を育てる教育にシフトしていく必要があります。
さもなければ、ナパージュと同じような運命をたどってしまいかねません。
『未知の問題』を解決できる人を生み出す教育環境をつくることを、日本の最優先事項の1つとして、予算、時間、人材を積極的に投資すべきです。
【『カエルの楽園 』感想・考察】まとめ


今回は、『カエルの楽園』の感想・考察を語ってみました。
気軽に楽しもうと思い買った本でしたが、日本がいかに危険な状況にあるかを認識させ、平和ボケから目を覚まさせてくれる、刺激剤的な小説でした。
続編の『カエルの楽園2020』も気になるのでまた読んでみようと思います。
今度は例の感染症をテーマにしているようですが…。
ではまた!
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