高瀬順子さんの『おいしいごはんが食べられますように』リアリティがあって面白かった!
他の人の感想や考察を見て、さらに作品を楽しみたい!
二谷以外にお菓子を捨てた人がもうひとりいたけど、結局誰だったのかな?
押尾さんと二谷のその後も気になる。
この記事は上記の要望にこたえます!
今回は第167回芥川賞を受賞した、高瀬準子さんの『おいしいごはんが食べられますように』を読んでみました。
タイトルからしてほっこり系の牧歌的小説かと思いきや全く真逆で、人間の闇深さを描いた、ある種とても怖い小説でした…。
ところで、作中でお菓子を捨てた人は二谷以外にもう一人いそうでしたよね。
もう一人の犯人、気になりませんか。
僕はもう一人の犯人とおぼしき人物を見つけたので、推理仕立てでお話しします。
そのほか、本作で気になったことも語ります。
- お菓子を捨てた人はおそらくあの人
- 押尾さんと二谷のその後
- 本作に学ぶ『絶対に敵に回してはいけない人』
- タイトルに込められた意味
友達とおしゃべりするような感覚で気軽に読んでいただき、楽しい時間を過ごしてもらえれば嬉しいです。
【おいしいごはんが食べられますように 考察】こんな話でした
第167回芥川賞受賞!
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」
心をざわつかせる、仕事+食べもの+恋愛小説。
職場でそこそこうまくやっている二谷と、皆が守りたくなる存在で料理上手な芦川と、仕事ができてがんばり屋の押尾。
ままならない微妙な人間関係を「食べること」を通して描く傑作。
引用元:講談社BOOK倶楽部
【おいしいごはんが食べられますように 考察】お菓子を捨てた人はパートの女性?
物語の本筋からは少しそれますが、芦川さんのお菓子をゴミ箱に捨てた人は、二谷以外にもうひとりいましたよね。
もうひとりの犯人、誰だと思いますか?
僕は、押尾さんの最終出勤日に、二谷と押尾さんにクッキーをプレゼントしたパートの女性ではないかとにらんでいます。
理由は、クッキーを食べた二谷がパートの女性にお礼を言いに行った時、驚いた顔をしていたからです。
コピーを取りに行くついでにパートさんの席に近寄り、「クッキーうまかったです」と声をかける。
パートさんはよかったです、と答えながら驚いた顔をしていた。
「二谷さんって、甘いものは夜食べる波なのかと思ってました。ほら、芦川さんのお菓子はいつも残業中のごほうびにされてるから」
引用元:講談社『おいしいごはんが食べられますように』146P
なぜ、驚く必要があるのでしょうか。
お腹が空いて日中に食べることもあるでしょう。
パートの女性が驚いたのは、二谷がお菓子を捨てていることを知っていたからではないでしょうか。
パート女性の犯行を推理
憶測の域を超えませんが、パート女性の犯行を推理してみました。
パートの女性は押尾さんと同じように、仕事をしない芦川さんにネガティブな印象を持っていた
↓
ちょっとした腹いせに、出勤前の朝、誰もいない時間に会社へ行きゴミ箱にお菓子を捨てようとした
↓
すでに誰かがゴミ箱にお菓子を捨てていた
↓
犯人はおそらく毎晩遅くまで残業し、ごほうびにお菓子を食べると言っていた二谷だと悟る
↓
捨てられていたお菓子がぐちゃぐちゃつぶされているのを見て怖くなり、自分はここまで憎悪を抱いているわけではないと思う
↓
もし自分のお菓子と一緒に捨てておいてバレてしまった場合、お菓子をつぶしたのも自分と思われなかない
↓
つぶれたお菓子を回収し、自分お菓子をゴミ箱に捨てた
藤さんや所長、原田さんといった他の主要人物が捨てているとは考えにくく、やはりこのパートの女性が一番怪しいです。
Next≫ 押尾と二谷はこのあとどうなる?ふたりの今後を推察
【おいしいごはんが食べられますように 考察】押尾と二谷の末路
芦川さんの”食べ物をおいしく味わう”価値観に嫌気がさしていた二谷。
ろくに仕事もしないのに職場で慕われる芦川さんが嫌いな押尾さん。
共に芦川さんに対して嫌悪感を持ち、いじわるをしていた二人ですが、物語の最後にはそれぞれの道を歩み始めます。
二人はこの後どうなるのでしょうか。
僕なりに考察してみました。
前途多難な押尾さん
物語のラストで転職を決め、職場での最後の挨拶でも我慢せず本音を話して、さっそうと去っていった押尾さん。
しかし、彼女の行く先は前途多難でしょう。
どこへ行っても芦川さんのような人はいるだろうし、周りの人に合わせて「おいしいね」とか言わなければいけないシーンはあるからです。
押尾さんは「まじめで仕事ができてしまう」「周りに同調し本音を隠すのが苦痛」という自らの性分と戦い続ける人生を歩み続けることになるのではないでしょうか。
押尾よ、本音を隠し周りに合わせるのがサラリーマンの処世術だ!
生涯最後の”本当の恋”をした二谷
物語の終盤、二谷と押尾さんが和風居酒屋で鴨鍋を食べた後、会話をしている場面。
「今の時代、みんなで食べるとおいしいと感じる力は必要ない」という押尾さんの発言を聞いた、二谷の発言と心の動きが描かれていました。
二谷は胸を衝かれて、話すつもりがなかったことを口にしていた。
「押尾さんがつるし上げられたあの日、芦川さんの机にゴミ袋に入れたお菓子を置いたのはおれだよ」
話しているそばから、言うんじゃなかったと後悔するが、続けてしまう。
「芦川さんも分かったはず。秋ごろに置かれていたお菓子は潰れていなかったけど、今回のはぐちゃぐちゃだったから、絶対、違う人間がやったんだってことは」
引用元:講談社『おいしいごはんが食べられますように』144P
この場面、二谷は「やっぱり押尾さんは深い部分で分かり合える人」だと確信し、衝動的に告白してしまったように見えます。
押尾さんは二谷とはちょうどいい距離感でいたいと思っていたので、付き合うことになりませんでした。
ただ、二谷にとってこの瞬間は、おそらく生涯最後の”本当の恋”をした瞬間だったのではないでしょうか。
今後の二谷の人生の中で、二谷のような特異な人間と本心から分かり合える女性が現れるとは思えません。
二谷は、芦川さんと付き合い続けて結婚するのか、はたまた別の女性と付き合うことになるのかはわかりません。
しかし、どんな女性と付き合うことになっても表面的にしか付き合えず、本心から相手を好きになることはない人生を歩むことになるでしょう。
Next≫ 本作に学ぶ『絶対に敵に回してはいけない人』
【おいしいごはんが食べられますように 考察】絶対に敵に回してはいけない原田さん的存在
物語の中に登場したベテランパート社員の原田さん。
パートのリーダー的な存在で、面倒見がよく社員に対しても影響力を持っていました。
原田さんのような人は、実際の職場にもよくいます。
注意しなければいけないのは、原田さん的な人は絶対に敵に回してはいけないということです。
敵に回してしまうとものすごく職場に居づらくなるからです。
原田さん的な人は職場の人間関係に大きな影響力を持っているため、敵に回すと周りの人からも冷たい目で見られるようになります。
実際の職場で原田さん的な人がいた時は、がっちりと心をつかんでおきましょう。
僕の経験上、原田さん的な人の心をつかむには、お土産のお菓子なんかをちょくちょく差し入れるのが効果的だったかも。
Next≫ 作者がタイトルに込めた怖いメッセージ
【おいしいごはんが食べられますように 考察】物語のラストとタイトルの意味にゾッとする
この物語のタイトルには、背筋が凍りつくような怖いメッセージが込められている可能性があります。
それは作者が、二谷と芦川を遠くから嘲笑っているかもしれないからです。
物語のラスト、送別会の席で二谷は芦川さんに結婚を意識していることを伝えていましたよね。
しかし、内心ではおいしいものにこだわる芦川さんのことをやはり理解できず、冷めた目で軽蔑していました。
芦川さんはそんな二谷の本心に気づかず、「結婚」の言葉にお花畑状態。
そして、二人を見届け物語を書き終えた作者は、作品にタイトルをつけます。
おいしいごはんが食べられますように
これが二人に対する冷酷な皮肉であるならば、作者がニタリと笑う顔に鳥肌が立ちます。
【おいしいごはんが食べられますように 考察】まとめ
今回は芥川賞作品『おいしいごはんが食べられますように』の考察を語ってみました。
おしいいものに興味がないという二谷には、テレビ東京系で放送されている『孤独のグルメ』シリーズを見ていただきたいですね。
「飯を食うってこんなに自由でわがままでいいんだ!」ということを実感できるはずです。(笑)
ではまた!
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