湊かなえ『未来』を考察!章子と亜里沙のその後は暗示されていた!

湊かなえさんの『未来』、リアルな描写や衝撃の展開が面白かった!
他の人の感想や考察を見て、さらに作品を楽しみたい!

この記事は上記の要望にこたえます。

こんにちは。当ブログ『楽本カフェ』のマスターとおるです。

今回は湊かなえさんの『未来』を読んでみました。

とてもつらい話でしたが、最後はイヤミスの女王らしからぬ、希望が見える終わり方をしましたね。

ところで章子と亜里沙はその後どんな人生を歩むのでしょうか。

実は、章子と亜里沙の未来は、物語の中で暗示されていたんです!

そのほか、良太が残したフロッピーや智恵理のことなどについても考察してみました。

この記事でわかること
  • 章子と亜里沙のその後は暗示されていた
  • 良太がフロッピーに秘密を残した理由
  • 智恵理の「話を聞いてくれる先生」の正体
  • おせっかいおばさん

友達とおしゃべりするような感覚で気軽に読んでいただき、楽しい時間を過ごしてもらえれば嬉しいです。

目次

【湊かなえ 未来 考察】こんな話でした

「こんにちは、章子。私は20年後のあなた、30歳の章子です。あなたはきっと、これはだれかのイタズラではないかと思っているはず。だけど、これは本物の未来からの手紙なのです」ある日、突然、少女に届いた一通の手紙。送り主は未来の自分だという――。家にも学校にも居場所のない、追い詰められた子どもたちを待つ未来とは!?(後略)

引用元:双葉文庫『未来』裏表紙のあらすじ

【湊かなえ 未来 考察】章子と亜里沙のその後

開園前のドリームランドの行列に並んでいた章子と亜里沙が、周りの人に助けを求める直前で本作は終わります。

ふたりはその後どうなるのでしょうか。

実は、作中にふたりの未来を暗示しているのではないかと推察できる人物がいます。

エピソード2で登場する、章子と亜里沙の担任だった篠宮先生と映像制作会社の時任です。

暗示していると推察できる理由は、篠宮先生は本作「未来」に込めた作者の想いを体現した人物のように、時任はその対称的な存在のように描かれているからです。

篠宮先生は章子と亜里沙を案じ、何とかふたりが未来に希望持てるようにしてあげたいと考え、行動していました。

篠宮先生は、文庫本のあとがきに書かれていた作者の想いを体現している人物といえます。

本書を読んだ方が、自分の目の前を走るバスを見て、あれに章子や亜里沙が乗っているかも、と思い浮かべてくだされば、うちの近所にはどんな子たちが住んでいるのだろう、と少し周囲を見渡してくだされば、『未来』という作品を世に出せた意味があるのではないかと思います。

引用元:双葉文庫『未来』478P あとがき

一方、映像制作会社の時任は純朴だった大学時代の篠宮先生を騙し、アダルト映像作品に出演させました。

篠宮先生は、このアダルト映像作品に出演していたことが原因で学校を辞めざるを得なくなりました。

時任は篠宮先生とは対称的に、子どもの未来を奪う存在として描かれています。

作者が「こういう人が増えてほしい」と願いを込めた篠宮先生。「こんなひどい大人がいる」ということを知らしめるために描かれた時任。

何か暗示めいたものを感じずにはいられません。

章子と亜里沙のその後のストーリーを考えてみた

章子と亜里沙が実際にどんな人生を歩むのか、上記の推察をふまえ『篠宮先生ルート』と『時任ルート』の2つで簡単にストーリーを考えてみました。

【篠宮先生ルート】
章子と亜里沙は少年院を出所後、かつての自分たちと同じように虐待やいじめで苦しむ子どもたちを救える仕事(NPOや児童福祉司など)に就く。

篠宮先生のように子どもをよく観察し、時には篠宮先生が自分たちにしてくれたように、子どもたちへ「未来からの手紙」を書いてはげましている。

【時任ルート】
章子と亜里沙は少年院を出所後、前科のある人間に対する世間の厳しさを知る。ふたりは生活苦から、簡単にお金が稼げる体を売る仕事に手を出すが、そこで悪い大人にだまされ傷つけられる。

「だますかだまされるかなら、だます方になったほうがいい」と考えた二人は、かつての自分たちのように虐待やいじめで孤立した少女達をだまし、性ビジネスへ”堕とす”ことでお金を稼ぐようになる。

マスターとおる

出所後どんな人と出会うかも、その後の人生を決める重要な要素の1つですね。

Next≫ 良太がフロッピーに秘密を残した理由

【湊かなえ 未来 考察】良太がフロッピーに秘密を残した理由

良太の死後、章子がみつけた遺品のフロッピーディスク。

フロッピーに記録されていた内容は、エピソード3の良太の話であることは容易に想像がつきます。

ただ、このフロッピーの内容には矛盾する点があります。

文頭で「墓場まで持っていかなければいけない秘密」(文庫387P)と記載されているにもかかわらず、タイトルは「僕たちの子どもへ」(文庫113P)となっていました。

墓場まで持っていこうとしているのに、フロッピーに記録し、自分たちの子どもへ真相を伝えようとしている。

明らかに矛盾しています。なぜなのでしょうか。

それは、良太が以下のように、子どもの未来を守ることを最優先にしていたからだと考えると合点がいきます。

推察:良太の考え

もしも自分たちの過去を子どもが知らないままなら、それに越したことはない。秘密のまま墓場まで持っていけばいい。

しかし、子どもが自分たちの過去を知ってしまった時、その過去を間違って認識し絶望してしまうことはあってはならない。

子どもが自分たちの過去を知ってしまった時は、このフロッピーを見せよう。

子どもが自分たちの過去を知っても知らなくても、子ども自身の人生をしっかりと歩めるよう、フロッピーに記録していたのでしょう。

実際、章子はおばあちゃんに両親の過去を聞かされた後、フロッピーの中身を見てショックを受けますが「本当のことを知れて良かったかもしれない」(文庫211P)と話しています。

Next≫ 智恵理の「話を聞いてくれる先生」とは?

【湊かなえ 未来 考察】智恵里の「話を聞いてくれる先生」は竜崎

亜里沙と章子が慕っていた先輩の智恵理。

智恵理は両親から虐待を受けており、解離性同一性障害(多重人格)を発症していました。

智恵理の中には「竜崎」という中年男の人格がいて、作中で「竜崎」になった智恵理を見かけた亜里沙が、声をかけるシーンもありました。

智恵理は定時制の高校に通っており「話を聞いてくれる先生がいる」と亜里沙に話していましたが、この先生、実は竜崎のことではないでしょうか。

以下の理由から推察できます。

推察理由
  • 「話を聞いてくれる先生」が作中に登場しない
  • 「話を聞いてくれる先生」がいるなら、自宅放火前に相談し、放火するところまで追い詰められなかったのでは?
  • 竜崎のモデルは、智恵理が幼少時に野良犬に襲われた時、助けてくれた近所の怖いおじさん(智恵理にとっては恐怖から守ってくれた頼りになる大人)

解離性同一性障害の人は、別人格と会話ができる人もいると聞いたことがあります。

おそらく智恵理は竜崎と会話ができ、竜崎に色々と相談していたのではないでしょうか。

そしてある時、過激な性格の竜崎から自宅に放火した方がいいとそそのかされ、実行してしまった。(自宅に放火する考えは、章子のフロッピーの記録を見て影響された可能性)

上記から、智恵理は話を聞いてくれる先生=竜崎に救われながら、最後には取り返しのつかないことをしてしまったと推察できます。

マスターとおる

作中の竜崎の様子から、竜崎自身は智恵理の存在や、自分が智恵理の中にいる人格であることを明確に認識していない様子でしたね。

Next≫ ウザいけど必要?「おせっかいおばさん

【湊かなえ 未来 考察】おせっかいおばさんの重要性

文庫のあとがきで作者の湊さんは「いじめや虐待、貧困で苦しむ子どもたちが実際に世の中にいることを知り、考えるきっかけになってほしい」という想いを込めて本作を書いたと語っています。

現実でも、章子や亜里沙と同じように苦しんでいる子どもたちがいることを考えた時、本作を通じて感じたのは「おせっかいおばさん」のような人が世の中には必要だということです。

なぜなら、苦しんでいる子どもたちはひとりで抱え込み、なかなかSOSを出さない傾向があると考えられるからです。

作中に出てきた章子も、中学でいじめられていることを親にも先生にも相談できず、気丈に立ち振る舞っていましたが最後には登校拒否になってしまいました。

亜里沙も父親から虐待を受けているにも関わらず、学校では強気のキャラで立ち振る舞っていました。

亜里沙の弟の健斗も父親に売春させられていることを、慕っている姉にすら話しませんでした。

智恵理も両親から虐待を受けていたのに、普段は明るく振舞っていました。

きっと現実にもそういう子どもたちはたくさんいるはずです。

しかし、SOSを発してくれなければ周りの大人も中々気付けません。

普段から周りの人に関心を持ち、些細な変化に対しても口を挟んでくる「おせっかいおばさん」のような人は必要なのではないでしょうか。

必要な「おせっかいおばさん」は篠宮先生みたいな人

実は、作中にも「おせっかいおばさん」が登場しています。

章子と亜里沙の担任だった篠宮先生です。

篠宮先生は教師という立場もありますが、普段からよく生徒を観察していた様子が描かれています。

須藤亜里沙だ。(中略)きつい物言いや態度が気になるものの、自分の心を守ろうと武装しているだけで、実は、クラスの誰よりも周りが見えているのではないかと思うほど、イジメられそうな子をかばったり安全な場所に非難させようとしたりしている、優しい子だ。

引用元:双葉文庫『未来』376P

問題を抱えていそうなのは三学年下の弟だ。腕や脚に時折、痣のようなものが見られ、父親から暴力を受けているのではないかと、(中略)

引用元:双葉文庫『未来』376P

実里は章子を嫌っている。それは成績に対する嫉妬だと思っていた。だけど、本当は父親との仲のよさを羨んでいたのかもしれない。(中略)

引用元:双葉文庫『未来』376P

篠宮先生は勤めていた小学校を辞める際、章子と亜里沙にドリームランドのチケットと「未来の自分からの手紙」を送り、ふたりが未来に希望を持って生きられるよう願いました。

結果的にふたりはこのチケットと手紙を励みに日々を生きていました。

時にはウザがられるかもしれませんが、篠宮先生のような「おせっかいおばさん」が苦しんでいる子どもの助ける存在になり得ることもあるのではないでしょうか。

【湊かなえ 未来 考察】まとめ

今回は湊かなえさんの『未来』を考察してみました。

本作はいじめや虐待に苦しむ子どもたちの感情や考え方が、リアルに描かれていた作品でした。

何かをきっかけに、もっと世の中に知れ渡ってほしい作品だと思います。

ではまた!

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楽しい記事になっていますので、よかったら見ていってください。

りらっくすねこ

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