
『旅のラゴス』、主人公と一緒に異世界を旅できて楽しかった。
他の人の感想や考察を見て、さらに作品を楽しみたい!
この記事は上記の要望にこたえます!
今回は、筒井康隆さんの『旅のラゴス』を読んでみました。
異世界をラゴスと一緒に旅し、様々な体験ができた本当に楽しい小説でした。
ところで、ラストの場面でラゴスは氷の女王に会うため森の中へ消えていきますが、果たして彼女に会えたのでしょうか。
気になったので、たぶんこうなるんじゃないかというパターンを考えてみました。
そのほか、ラゴスと一緒に旅をしてきた中で「ラゴス、それはどうなの?」「別世界にもこんな人いるんだ」など、疑問に思った部分について語ってみたいと思います。
- 氷の女王に会ったラゴスはいかに!?
- この小説は作者の妄想
- 女ぐせの悪いラゴス
- 登場キャラの人生観が分かる名言4選
友達とおしゃべりするような感覚で気軽に読んでいただき、楽しい時間を過ごしてもらえれば嬉しいです。
【旅のラゴス 考察・感想】こんな話でした


北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。
集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?
異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
引用元:新潮社
【旅のラゴス 考察・感想】氷の女王に会ったらラゴスは死ぬかも


最後の場面、本当にいるかどうかわからない氷の女王(ラゴスが若い頃に恋をしたデーデ)に会いに、ラゴスは森の中へ入っていきます。
ラゴスは、氷の女王が存在しないこと以外のあらゆる事態も想定し、どんな結末であろうと受け入れる覚悟をもって、氷の女王に会いに行ったと考えられます。
例えば以下のようなケースも当然想定していたでしょう。
- 氷の女王はデーデではない別人だった
- 氷の女王はデーデだったが、外見も性格もみにくい老婆になっていた
- 氷の女王はデーデだったが、自分を覚えておらず追い返された
- 氷の女王はデーデだったが、自分を覚えておらず覚えているフリをされた
ただ、「氷の女王はデーデだったが、自分を覚えているフリをされた」だった場合、以下のような会話になることが考えられます。
ラゴス:デーデ、ずっと君に会いたかったんだ!俺を覚えているかいラゴスだ!
デーデ:えっ…あー、もちろん覚えてますわラモスさん。いやー再会できて嬉しいですよー。(やべ、こいつ誰だっけ)
ラゴス:本当に久しぶりだね…(名前間違えてる、ラモスって…。絶対俺のこと覚えてない…。でもここで訂正したら、デーデが自分を覚えていないことがはっきりしてしまう…。)
(その後客室にて)
デーデ:ラモスさんは今日はどちらからいらっしゃったんですか?
デーデ:ラモスさん、お茶のおかわりいかがですか?
デーデ:はは、ラモスさんらしいですねー。
デーデ:いやー今日は楽しかったです。また一緒に飲みに行きましょう。(ふう、とりあえずごまかせたわ)
ラゴス:……。
50年以上恋焦がれた相手に上記の対応をされたら、相当メンタルを打ちのめされそうですが、果たして老いらくのラモス、じゃなくてラゴスはたえられるのでしょうか…。
ショックで死んでしまわないか心配です。
Next≫ 作者の願望を叶えた妄想小説
【旅のラゴス 考察・感想】この小説は男が鼻ほじで考える妄想


『旅のラゴス』では行く先々で様々なことが起こりますが、よくよく考えてみると、男が鼻ほじで考えるような妄想が実現していました。
例えば以下のようなことです。
- スリルに満ちた冒険
- 想像を超える奇想天外な経験
- どこかの国の王様になって慕われる
- 色んな女性と関係を持つ
- 金持ちの実家でニート
- 出版した本が売れまくって印税ガッポリ
本作は、作者の筒井さんが普段から妄想していたことを具現化した作品ではないかと僕はにらんでいます。
そう考えると、筒井さんはこの本を書いている時、さぞかし気持ちよかったんだろうなあと容易に推察できます。笑
Next≫ 性分だから仕方ない?女ぐせの悪いラゴス
【旅のラゴス 考察・感想】ラゴスの女の捨て方がひどい!


ラゴスは旅先で様々な女性とアバンチュールを楽しみますが、中にはひどい捨て方をされた女性もいました。
以下の二人はその代表です。
-
- ラウラ(銀鉱編)
- ニキタ(王国への道編)
ひとりずつ見ていきましょう。
【ラウラ】7年間同棲したのちリリース
銀鉱編で、滞在先の街の人と一緒に盗賊にさらわれたラゴス。
ラウラは一緒に銀鉱を脱出するまでの7年間、ラゴスの身の回りの世話をする、内縁の妻のような存在でした。
しかし、銀鉱を脱出した後、ラウラが旅を続ける足かせになると考えたラゴスは、ラウラに別れを伝えます。
泣きながら「一緒に銀鉱で暮らし続けたい」と言うラウラを、ラゴスは「ダメだ」の一言で突き放し、次の日の出発に備えてさっさと寝てしまいます。
なんという非情な男でしょうか。笑
ラウラも一緒になれないことは薄々分かっていたとはいえ、女性の若い時期をむげにするラゴスの手癖の悪さが際立つ出来事でした。
【ニキタ】置き手紙を1枚残し蒸発
王国への道編で、先人が残した本が蔵書されたドームに滞在し、本から知識を吸収して研究や村人への助言を続けたラゴス。
ニキタはそんなラゴスのことが大好きで、ドームに出入りしてラゴスの身の回りの世話をしていました。
やがて村長の強引なすすめで結婚し、子供もできましたが、ドームでの生活に飽きてきたラゴスは旅の再開を決意します。
ラゴスが旅を再開しようとしていることに気づき「行ってしまうのですか」尋ねたニキタに、ラゴスは「どこへも行かないよ」と嘘をつきます。
そしてその日の夜、手紙を残して王国を出ていきました。
王国編でも、ラゴスはさすらいの旅人としてカッコよく描かれています。
しかし冷静に考えてみると王国編のラゴスは、「置手紙1枚で妻子を捨て蒸発した、図書館引きこもり男」でしかないのです。
最低の甲斐なしです。笑
Next≫ 人生を考えさせられる登場人物たちの名言
【旅のラゴス 考察・感想】登場キャラの人生観が見える名言4選


ラゴスが旅先で出会った様々な人たちは、僕たちとは別の世界で生きていながら、同じようなことを考えている節もありました。
そこで、登場人物の人生観がかいま見える、興味深い名言を4つ取り上げてみました。
1つずつご紹介します。
名言1:❝どのような取引であろうと、金を払った方が精神的優位に立つのだ❞ ザムラ
どのような取引であろうと、金を払った方が精神的優位に立つのだ
引用元:新潮文庫『旅のラゴス』38P
顔編に登場した、特殊な才能をもつ画家ザムラ。
ラゴスに似顔絵を描いて代金をもらったため、ラゴスに優位な立場に立たれていると考えたザムラは、ラゴスに酒をおごりたいと話し、上記の発言をします。
『旅のラゴス』の世界の様子を見ていると、基本的に資本主義経済が成り立っていることが伺えます。
その資本主義社会で、画家として生計を立てながら旅を続けるという、シビアな人生を歩んできたザムラ。
おそらくお金を得るために人にこき使われ、ひもじい思いもたくさんしたのでしょう。
上記の発言からは「誰であろうと金のことで弱みを握られてはいけない」というザムラの人生訓がかいま見えます。
名言2:❝女だよ、女❞ ウンバロ
女だよ、女。壁の向こうにゃ凄え裸の美人が寝ている。
引用元:新潮文庫『旅のラゴス』56P
つまり欲望というより、こうなってくるともう想像力だな。なまなましい想像力だ
壁抜け芸人編に登場した、壁をすり抜ける特技を持っているウンバロ。
旅先で出会ったラゴスに、「壁をすり抜ける原動力はなんだ」と聞かれ上記を発言。
この発言を聞いてラゴスはうんざりしてしまいます。
「性欲」や「モテたい」という気持ちは、下等で俗っぽいものとして見られがちです。
しかし、性的な欲望は、何かをするための原動力となり大きなエネルギーを生み出します。
僕も昔アルバイトをしていた頃、同じアルバイト先で働いていた女の子に恋をしていた時がありました。
その頃は彼女にモテたくて、関心のなかったファッションや髪型に気をつかい、太り気味だった体をしぼり、彼女と会ったときにどんな話をすれば仲良くなれるのかを真剣に考えていました。
シフトが入っていない時も、彼女と数分話すためだけに、自宅からバイト先まで片道4〜5kmの、冬風が吹きすさぶ中を自転車で通っていました。笑
今考えるとよくやっていたなと思いますが、どれもこれも「モテたい」という気持ちが原動力になっていたからこそ、できたことです。
名言3:❝あなたの世話をするのがわたしの生き甲斐のように思えてきたのよ❞ ゼーラ
ずっと家にいてほしいの。わたしは近ごろ、ずっとあなたの傍にいて、あなたの世話をするのがわたしの生き甲斐のように思えてきたのよ
引用元:新潮文庫『旅のラゴス』228P~229P
氷の女王編で、実家に帰ってきたラゴスの身の回りの世話をしていた兄嫁ゼーラ。
ラゴスを慕っていたゼーラは、「父親が生きている間は家にいる」という隠居後のラゴスに対し、上記を発言します。
この発言からは「女性の幸せは、家庭に入って家族の世話をして見守ること」という、古き良き時代の価値観が伺えます。
本作が雑誌で連載されていたのは80年代半ば、ちょうど「男女雇用機会均等法」が制定され、男女の社会的格差が是正されはじめた頃です。
女性の社会進出が進み、「女性も社会で活躍する時代」という価値観がどんどん強くなっていく中で、作者の筒井さんは、ゼーラのような古き良き時代の女性に理想を抱いていたのかもしれません。
名言4:❝歳をとると孤独なもんさ❞ ドネル
歳をとると孤独なもんさ。誰も構ってはくれなくなる。厄介者扱いされる。(中略)
引用元:新潮文庫『旅のラゴス』248P
しかし、そういう時のためにこそ同じ年寄り仲間がいるんだ(後略)
氷の女王編で、北方の先にある森の番人として、森の入口の小屋でひっそりと暮らしていたドネル。
小屋を訪ねてきたラゴスが、氷の女王に会うため森へ旅立とうとするのを引き止めるため、上記を発言しました。
歳を取ると孤独になるという実感は、現在30代半ばの自分には分かりません。
しかし、独居老人の孤独死が現実の社会で問題になっていることを考えると、孤独な老人が少なからずいることも事実です。
孤独死する老人がいるという事実を考えると、ドネルの発言は「老人になる前に仲間をつくれる自分になっておくべき」という警鐘ともとれます。
【旅のラゴス 考察・感想】まとめ


今回は『旅のラゴス』の考察・感想について語ってみました。
本作は、ラゴスと一緒に旅をする中で「すべての人にとって、人生そのものが旅である」ということを教えてくれる作品でもありました。
何が起こるかわからないのが人生ですが、ラゴスのように楽しみながら旅を続けていきたいものです。
ではまた!
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